パイロット・スタディ・プログラム

「北部タイのゾウ飼育施設におけるアジアゾウとヒトの相互行為分析に向けた行動観察調査」

R7 2-6 (令和7年度 FY2025)

研究代表者築地 夏海 (京都大学大学院理学研究科 / 博士課程後期)
研究課題北部タイのゾウ飼育施設におけるアジアゾウとヒトの相互行為分析に向けた行動観察調査
研究対象国タイ

研究概要

本研究ではタイ北部にあるゾウ飼育施設において、ヒトとの共生の歴史が長いアジアゾウ(以下「ゾウ」)と、ゾウの面倒を見るゾウ使いとの間で見られる発話や身振りなどの行為のやり取り(=相互行為)の分析を目指す。本プログラムではその前段階として、ゾウ使いからゾウ、ないしゾウからゾウ使いへの発話や身振りを記録しながらゾウ・ヒトそれぞれの行動目録を作成し、異種間における関心がどのような行為によって成り立つのかを整理する。

研究目的・意義・期待される効果など

本研究の目的は、ゾウとヒトの異種間、ないしゾウ同士が、どのような条件や場面で他種(他個体)に関心を向けるのかを解明することにある。特にゾウ使いがゾウと行動を共にする際にゾウへの声かけを頻繁に行うことに着目して、ゾウ使いからゾウへの声かけ、および声かけに対するゾウの反応といった一連のやり取りでの相互行為分析を実施する。これにより、ゾウ使いがどのようにゾウの行動をコントロールするのか、またゾウがいかにしてゾウ使いの指示に従うのかを明らかにする。
ゾウは大型動物のためヒトの生活を脅かすことから、世界各地でヒトとの軋轢が頻繁に見られる動物である。一方でタイをはじめとした東南アジアでは、野生のゾウが捕獲・所有・飼育されて林業や観光業の手段として使われるなど、ゾウがヒトに飼育され続けてきた歴史がある。形態的・系統分類的に大きく異なるゾウとヒトとが、いかなる形で互いを理解しあっているのかは解明の意義が大きい。

本研究の調査地は、飼育ゾウの保全・ゾウ使いの福利厚生の両側面を推進している先進的な施設である。ゾウとヒト両方について観察可能な事実をベースに分析を試みることで、飼育下においてゾウとヒトとがいかにして共生しているかを明らかにすることが期待される。

Photo 1: 調査施設にて、担当のゾウと歩くゾウ使い
Photo 2: (観察中の調査者)ゾウ観察中の様子