パイロット・スタディ・プログラム
「在外ブータン人コミュニティに関する越境型地域研究: 脱領域化と再領域化に着目して」
R7 2-3 (令和7年度 FY2025)
| 研究代表者 | 菊川 翔太 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 / 大学院生) |
| 研究課題 | 在外ブータン人コミュニティに関する越境型地域研究: 脱領域化と再領域化に着目して |
| 研究対象国 | 日本, ブータン, オーストラリア |
研究概要
本研究では、オーストラリア及び日本に在住するブータン人を研究対象とし、ブータン社会がいかに脱領域化し、在外ブータン人コミュニティとして再領域化していくのかを検討する。博士論文の執筆を見据えた本パイロット・スタディは、従来の一国主義的な地域研究、特に閉鎖的・固定的に描かれがちなブータン地域像を乗り越える試みである。加えて、多文化社会オーストラリア、外国人労働者の受入れが加速化する日本社会におけるエスニックマイノリティの状況を比較地誌的に描く試みでもある。
研究目的・意義・期待される効果など
日本及びオーストラリアにおけるブータン人が集う空間の中でも、 定期的かつ多くの人数が集まるのがサッカーの空間である。イギリス発祥のスポーツであるサッカーは、20世紀前半にインドを経由してブータンに流入し、20世紀後半以降のブータン国内での普及を経て、21世紀の現在では在外ブータン人コミュニティの重要なスポーツ空間となっている。そこで、本パイロットスタディでは、ブータン国内外で老若男女問わず圧倒的な人気を誇るサッカーに着目し、サッカーにまつわる事象から在外ブータン人コミュニティの脱領域化と再領域化を描き出す。
本研究の調査は、日本の大阪および西オーストラリア州パースでの現地でのフィールドワークを通して実施する。特にサッカーを通じて集まる物理的な空間、日常的実践、帰属意識、ホスト社会との関係性の4点に着目する。両地域におけるブータンサッカーの参与観察および運営者への半構造化インタビューに加え、特定のチームへのアンケート調査を実施する。
本研究では政治・宗教・食・教育などに代表される、多元化するブータン人エスニック空間を包括的に描くことには限界がある。また、調査対象がサッカーに偏ることで、ジェンダーや年代層における偏りが生じうる。本パイロット・スタディでのサッカーを対象とした調査に加え、博士論文の執筆に向けて衣食住の空間に着目した長期間の現地調査を行うことで、将来的にはグローバル共生に向けた越境型ブータン地域研究の構築へと発展させていきたい。




