インキュベーション・プログラム

「重層信仰論再考: 次世代の東南アジア宗教論に向けた作業仮説構築の試み」

R6-7 1-4 (令和6年度 AY2024 新規)

研究代表者片岡 樹 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 / 教授)
共同研究者西田 昌之 (東北学院大学教養教育センター / 講師)
下條 尚志 (神戸大学大学院国際文化学研究科 / 准教授)
津村 文彦 (名城大学外国語学部 / 教授)
小林 知 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 教授)
西川 慧 (石巻専修大学人間学部 / 准教授)
西 直美 (同志社大学一神教学際研究センター / 共同研究員)
前田 彩希 (神戸大学大学院国際文化学研究科 / 博士課程)
中島 咲寧 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 / 博士課程)
小川 絵美子 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 / ジュニア・フェロー)
加藤 久美子 (上智大学アジア文化研究所 / 客員所員)
研究課題重層信仰論再考: 次世代の東南アジア宗教論に向けた作業仮説構築の試み
研究対象国タイ, ベトナム, カンボジア, インドネシア, マレーシア

研究概要

本研究は、東南アジア研究の分野での定説となってきた重層信仰モデルを再検討することで、民間信仰への視点から東南アジアの新たな地域像の提示を試みるものである。重層信仰モデルは土着信仰と外来世界宗教との時間的前後関係にもとづく腑分けをアプリオリに持ち込むため、分析図式が静態的になるとともに、当事者の意味づけと無関係な要素の分類に終始しやすい。そうした定説の限界を超えて東南アジア宗教の現代的動態を描き出すために、本研究では、(A)世界宗教との関係、(B)民族間関係、(C)国家との関係、の三局面に着目して、各局面における民間信仰の神々をめぐる相互交渉を検討する。

研究目的・意義・期待される効果など

本研究の目的は、これまで自動的に文化の古層を代表するものと考えられてきた民間信仰を、現代東南アジアの宗教的動態のなかに位置づけなおすことで、新たな東南アジア宗教論の、ひいては東南アジア世界像のモデルを提示することである。

本研究の意義は、東南アジア世界の独自性の探究に邁進してきた前世代による研究蓄積(たとえば弘文堂による『講座東南アジア学』シリーズなど)を前提に、草創期の東南アジア宗教論を再検討し、東南アジアに共通するプロトタイプの探求から東南アジア宗教論を解き放つことで、次世代を担う中堅・若手研究者の視点を組み入れつつ、新たな東南アジア宗教ひいては東南アジア社会の動態の提示を試みる点にある。

本共同研究会を通じ、次世代の東南アジア宗教論に関し、制度外の民間信仰という視点からの新たな作業仮説にたどり着くこと、および、そこでの知見をもとに、宗教の動態から見た新たな東南アジア地域像を仮説的に提案することを構想している。本共同研究会は、科学研究費補助金の申請および取得を前提としているため、共同研究会終了後は、同補助金による共同研究の中間報告を兼ねて『東南アジア研究』あるいはSoutheast Asian Studiesに特集を寄稿する。さらに同補助金による共同研究の終了時に、本共同研究での成果とあわせた論集の出版を行う。

シャン州の土地神コーミョーシンと合祀される本頭公(ミャンマー、タチレイ)
シャン州の土地神コーミョーシンと合祀される本頭公(ミャンマー、タチレイ)
石の形で祀られるダト公(マレーシア、ペナン)
石の形で祀られるダト公(マレーシア、ペナン)