インキュベーション・プログラム
「東南アジアにおけるマダニ媒介性感染症の実態解明と簡易迅速的な診断法の構築」
R6-7 1-2 (令和6年度 AY2024 新規)
研究代表者 | 田仲 哲也 (鹿児島大学共同獣医学部 / 教授) |
共同研究者 | 山崎 渉 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 教授) Galay Remil Linggatong (フィリピン大学獣医学部 / 准教授) Talactac Melborune Rio (カヴィテ州立大学獣医生命科学部 / 教授) Duong Duc Hieu (ベトナム国立農業大学獣医学部 / 講師) Mai Thi Ngan (ベトナム国立農業大学獣医学部 / 准教授) |
研究課題 | 東南アジアにおけるマダニ媒介性感染症の実態解明と簡易迅速的な診断法の構築 |
研究対象国 | フィリピン, ベトナム |
研究概要
フィリピンやベトナムは近年著しい経済成長を遂げ、日本への農畜産品の輸出も急増している。しかし、これらの地域における種々の感染症は、家畜の生産性向上を妨げる最も重要な位置を占める。とりわけ、マダニ媒介性感染症による被害は深刻とされ、その実態解明が喫緊の急務となっている。本研究は日本と貿易が盛んなフィリピンやベトナムにおけるマダニ媒介性感染症の流行実態を明らかにし、日本の輸入検疫体制強化とフィリピンやベトナムの診断技術の向上と普及に資することを目的として実施する。
研究目的・意義・期待される効果など
本研究は、日本と地理的に近いフィリピンやベトナムにおけるマダニ媒介性感染症の流行の実態を明らかにすることに着目した。すなわち、フィリピンやベトナムにおける牛のアナプラズマ、バベシア原虫、タイレリア原虫、豚のアフリカ豚熱ウイルスなど、マダニ媒介性病原体の流行実態を分子疫学的手法により調査することを企画した。とくに、バベシア原虫やアフリカ豚熱ウイルスは牛や豚に重篤な致死的感染症を引き起こし、これらは家畜(法定)伝染病として指定され、日本国内には存在しない。しかし、これらの病原体が一度国内に侵入すれば広く蔓延・浸潤する可能性が大きく、その清浄化は非常に困難と想定される。このように、フィリピンやベトナムにおけるマダニ媒介性感染症に焦点をあて、その流行実態を解明することにより、日本の輸入検疫体制強化とフィリピンやベトナムの診断・予防対策の向上に資することを目的とした。
これまでに、東南アジアにおけるマダニ媒介性感染症の疫学調査は主に本国の研究者らによって断片的に行われていた。そのほとんどの研究が伝統的な古い診断手法によるもので、その研究成果も国際的にほとんど公表されていないのが現状である。したがって、本研究の実施によりフィリピンやベトナムにおけるマダニ媒介性感染症の流行実態が把握できれば、当該地域の家畜生産性の向上を図る上でも、また、安全な畜産品をこの地域から日本に輸入する見地からも極めて重要な意味を持つものと確信する。