資料共有プログラム

「ハノイ旧市街寺社神祠拓本から見る近代以後の都市変容に関する基礎研究」

R5-6 6-1 (令和5年度 AY2023 新規)

研究代表者大田 省一 (京都工芸繊維大学大学院・デザイン建築学系 / 准教授)
共同研究者矢野 正隆 (東京大学経済学部経済学資料室 / 助教)
Nguyễn Tuấn Cường (ベトナム社会科学アカデミー・漢喃研究院 / 院長)
李 貴民 (國立成功大學・歴史學系 / 兼任助理教授)
柴山 守 (京都大学・東南アジア地域研究研究所 / 連携教授)
木谷 公哉 (京都大学・東南アジア地域研究研究所 / 助教)
研究課題ハノイ旧市街寺社神祠拓本から見る近代以後の都市変容に関する基礎研究
研究対象国ベトナム

研究概要

ハノイ旧市街に所在する寺社神祠亭の石碑・梵鐘から採取した碑文拓本をデジタル化し、碑文文言を翻刻する。碑文から読み取れる修築・寄進等製作情報を元に抽出した寺社神祠について、サンプリング実測調査を行う。拓本デジタル画像・翻刻テキスト・実測データとGoogle mapを統合し、「ハノイ旧市街拓本データベース」を構築する。このデータベースを利用し、ハノイ旧市街の信仰施設について、遺物・建築意匠等の物性及び支持母体となる僧侶神職寄進者等都市住民構成の両面について、19世紀〜現在に至る空間・社会変化を考察する。「ハノイ旧市街拓本データベース」を都市空間とその社会構成の変容過程を分析する基礎資料として公開する。

研究目的・意義・期待される効果など

ハノイ旧市街は12世紀の市場Kẻ Chợを起源とし、様々な文化・宗教的遺産が重層的に集積されている古都であるが、近代以降は、19-20世紀の植民地化と戦争、21世紀の経済発展によって都市空間と住民構成を変容させてきた。その影響は寺Chùa・社Đền・神祠Miếu・亭Đìnhなどの信仰施設にも及び、修築・移転・転用、合祀・分祀が相次いだ。2010年ハノイ市中心部の昇竜タンロン都城遺跡がUNESCO世界遺産に登録されたことを契機に、隣接する旧市街の寺社神祠亭もベトナム国家文化遺産として保存するために、網羅的な史跡評価調査が行われた。しかし、その多くが19世紀以降に新築・修築された比較的新しい遺跡であったため、史的価値を高く評価されないまま、以降の学術調査は十分になされておらず、報告書も公開されていない。

そこで本研究では、これらのハノイ市旧市街信仰施設の石碑・梵鐘から採取した拓本のデジタル画像と、19世紀以降に刊行された当該地域に関する各種地誌・地図・写真・植民地政庁文書等の史資料、また信仰施設の現状調査から得られる実測・撮影データを統合したデジタルアーカイブズ・データベース(以下、DB)を構築し、これを基礎資料として、信仰施設の変容という観点から近代化によるハノイ旧市街の変遷過程を考察する。石碑・梵鐘には、建立の縁起・寄進年・寄進者名等の製作経緯が刻まれており、施設を維持・運営する地域社会の人々についての情報が記録されている。これらを詳細に比較検証することで、「都市空間の膨張による既存施設の移転・転用・狭小化」「地域住民の交替や新興宗教の流入による建立や合祀」「近代技術の輸入と経済発展による建築変化」など、近代都市としてのハノイの通時的変容の経緯を知ることができる。

ハノイ旧市街の祠堂
ハノイ市内に残る碑文