資料共有プログラム

「ハノイ旧市街寺社神祠拓本から見る近代以後の都市変容に関する基礎研究」

R5-6 6-1 (令和6年度 AY2024 継続)

研究代表者大田 省一 (京都工芸繊維大学未来デザイン工学機構 / 准教授)
共同研究者矢野 正隆 (東京大学経済学部経済学資料室 / 助教
Nguyễn Tuấn Cường (ベトナム社会科学アカデミー・漢喃研究院 / 院長)
李 貴民 (國立成功大學・歴史學系 / 兼任助理教授)
柴山 守 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 連携教授)
木谷 公哉 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 助教)
研究課題ハノイ旧市街寺社神祠拓本から見る近代以後の都市変容に関する基礎研究
研究対象国ベトナム, タイ, ラオス

研究概要

ハノイ旧市街に所在する寺社神祠の石碑・梵鐘から採取した碑文拓本をデジタル化し、碑文文言を翻刻する。碑文から読み取れる修築・寄進等製作情報を元に抽出した寺社神祠について、サンプリング実測調査を行う。拓本デジタル画像・翻刻テキスト・実測データとGoogle mapを統合し、「ハノイ旧市街拓本データベース」を構築する。このデータベースを利用し、ハノイ旧市街の信仰施設について、19世紀〜現在に至る空間・社会変化を考察する。「ハノイ旧市街拓本データベース」を都市空間とその社会構成の変容過程を分析する基礎資料として公開する。

研究目的・意義・期待される効果など

ハノイ旧市街は様々な文化・宗教的遺産が重層的に集積されている古都であるが、近代以降は、都市空間と住民構成を変容させてきた。その影響は信仰施設にも及び、修築・移転・転用、合祀・分祀が相次いだ。旧市街の寺社神祠亭もベトナム国家文化遺産として保存するために史跡評価調査が行われた。しかし、その多くが19世紀以降に新築・修築された比較的新しい遺跡であったため、史的価値を高く評価されないまま、以降の学術調査は十分になされていない。

そこで本研究では、これらのハノイ市旧市街信仰施設の石碑・梵鐘から採取した拓本のデジタル画像と、その翻刻テキスト、現況調査データを統合した「ハノイ旧市街拓本データベース」を構築し、拓本資料の保存用に留まらず、ハノイ都市研究のツールとして運用する。当該DBは、Google Map・Google Spreadsheet等普及クラウドシステムを応用した簡易DBとして開発され、日本とベトナムの研究者が共同でデータを長期持続的に構築・運用していくことが可能である。将来的には、日本とベトナム両国において、19世紀以降に頻繁に刊行された地誌・写真等史資料、市街図・地籍図、現状計測記録など収集・照合し、時系列的に編集した4Dデータとして集積する。これによって、100年を超えるハノイ旧市街の近代都市空間を可視化するデジタルアーカイブズDBを構築し、近代都市変容過程の分析を行う学術研究を進めていく。

ハノイ旧市街の拓本
ハノイ旧市街の拓本
史料を所蔵する在バンコク越僑寺院
史料を所蔵する在バンコク越僑寺院