インキュベーション・プログラム

「地域研究に根ざしたアジア外交研究の創成」

R5-6 1-5 (令和6年度 AY2024 継続)

研究代表者川島 真 (東京⼤学⼤学院総合文化研究科 / 教授)
共同研究者相澤 伸広 (九州大学比較社会文化研究院 / 准教授)
青木 まき (アジア経済研究所 / 研究員、グループ長代理)
鈴木 絢女 (同志社大学法学部 / 教授)
高木 佑輔 (政策大学院大学 / 准教授)
高橋 知子 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 機関研究員)
中溝 和弥 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 (ASAFAS) / 教授)
三重野 文晴 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 教授)
研究課題地域研究に根ざしたアジア外交研究の創成
研究対象国中国, 台湾, フィリピン, マレーシア, タイ, インド, ミャンマー, インドネシア

研究概要

アジア研究は長らくその貧困・開発に重点が置かれていたが、1990年代から経済発展と社会変容の研究に移行した。2010年代以降、アジア諸国は国際社会での重要な「アクター」としての役割を強め、外交も経済発展のためのものからより明確な対外政策を伴うものへと変化した。しかし、日本のアジア研究はこの変化に十分対応しておらず、地域研究の手法と国際政治学の視点を統合することが求められている。本研究ではそのための方法論を構築し、国内外に発信を行う。

研究目的・意義・期待される効果など

本研究の目的は、アジア地域研究に「外交」や「対外政策」の領域を確立し、国際政治や国際関係研究にアジアを含む開発途上国や新興国を主体的に位置付けることである。これを達成するために、東南アジア、東アジア、南アジアを中心に事例研究を行い、方法論的な可能性や課題を検討し、議論を深めることで新たな研究分野の形成を目指す。この研究成果は、内外の学界で公表し、将来的な大型共同研究申請の基礎とすることを予定している。

本研究の独自性は三点にある。まず、従来のアジア地域研究では十分に扱われていなかった「外交」研究を深化させる点。次に、国際政治研究や国際関係研究で十分に対象とされてこなかったアジアを、新たな方法論的課題として位置付ける点。そして、現状分析が地域研究的知見を十分に踏まえていない点を批判的に検討し、地域研究的知見を活かした外交研究の意義を主張する点である。また、東南アジア、東アジア、南アジアを中心に、社会科学と地域研究の横断的な研究チームを組織し、新たな課題に取り組む姿勢も特徴的である。

意義としては、新たな研究分野「地域研究に根ざしたアジア外交研究」を創成し、アジアの新興国や開発途上国の外交研究を主体的に描き出すことが挙げられる。これは社会の要請に応えるだけでなく、社会変容を踏まえた新たな研究分野を開拓する試みでもある。また、現状分析的なアジア外交論に対し、地域研究の意義を再評価する点にも大きな意義がある。

具体的な研究方法と期待される効果としては、事例研究を蓄積し、相互に議論を進めることで、外形的理解とは異なる内在的理解を追求する。また、対面とオンラインでの研究会活動を通じ、西アジアや中央アジアなどの研究者を招聘し、知見を補完する予定である。最終的に、各事例研究の成果は学会で発表し、論文集として刊行することを視野に入れつつ、2年後には科学研究費助成事業への応募も見据えている。