インキュベーション・プログラム

「東〜東南アジアにおける世界農業遺産の推進に資するプラットフォームの構築」

R5-6 1-4 (令和5年度 AY2023 新規)

研究代表者内藤 直樹 (徳島大学大学院社会産業理工学研究部 / 准教授)
共同研究者赤池 慎吾 (高知大学教育研究部自然科学系 / 准教授)
石川 登 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 教授)
石川 初 (慶應義塾大学環境情報学部 / 教授)
岩男 望 (京都大学大学院農学研究科 / 博士課程院生)
岩佐 光広 (高知大学教育研究部人文科学系 / 准教授)
大和田 順子 (同志社大学政策学部 / 教授)
片岡 樹 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 / 教授)
鎌田 磨人 (徳島大学大学院社会産業理工学研究部 / 教授)
殿谷 梓 (三好市役所産業観光部 / ジオパーク地質専門員)
野澤 俊太郎 (東京大学大学院総合文化研究科 / 特任助教)
町田 哲 (鳴門教育大学大学院学校教育研究科 / 准教授)
渡邊(斎藤)めぐみ (スローフード日本/Slow Food International / 代表理事)
研究課題東〜東南アジアにおける世界農業遺産の推進に資するプラットフォームの構築
研究対象国日本

本研究の目的は、世界農業遺産(Globally Important Agricultural Heritage Systems: GIAHS)認定地域の理解や推進支援にむけた異分野の研究者と実務家による協働と対話に基づき、①GIAHSになるような農業システムが形成されるに至った歴史的な機序を包括的に理解するとともに、②農業システムの理解に関わる各研究分野や実務の特性を自己再帰的に考察する。そのために自然科学と人文・社会科学を架橋した異分野からなるアカデミアとGIAHS推進に関わってきた実務家からなる超域的で国際的なプラットフォームを組織する。そして、世界第二位の認定サイトを有する日本が有するGIAHS推進に関する知見を総合して、東〜東南アジア地域におけるGIAHSの保全や新たな申請を主導的に支援する方途を探求する。

研究目的・意義・期待される効果など

本研究では、日本においてGIAHSに認定された地域の農業システムが形成されるに至った歴史的過程の解明を目指す。その際、a)時間:地質学的な時間、動植物の時間、人間の時間等の異なる時間の摺り合わせと、b)空間:地域、国家、市場といった異なる空間のつながりや切断の動態が、いかにして「GAIHSの農業システム」というグローバルな制度に結びつく機序に注目する。

そのためにメンバーが長期にわたって研究や実務の対象としてきた地域(徳島、和歌山)に異分野のアカデミアと実務家および地域のステークホルダーが結集する。その際に、日本の農業システムとは歴史的な関係や生態学的な関連性が深い東南アジア地域をフィールドにしてきた3名の地域研究者(文化人類学)が参加する。そうすることで、東南アジアから日本の地域社会を再帰的に見なおすことが可能になる。また、異分野の研究者や実務家が議論を重ねることで、各分野のものの見方や方法論の可能性や限界についての再帰的な発見を得ることができる。これは科学技術社会論的な視点と方法論を用いることで、従来は対象を一方的に分析することが当然視されてきた科学的営みの過程に焦点をあて、「GIAHS認定地の農業システムの核心」というナラティブの生産をめぐる科学知識の働きをも研究の範疇に含める意欲的な取り組みである。

そのうえでGIAHSの推進に関する研究者と実務家によるプラットフォームを組織化して、a)徳島県と和歌山県のGIAHS認定地の保全支援および、b) 京都府南部の竹林のGIAHS申請可能性に関する探求をおこなう。そうすることで、あくまでアカデミックな知見を基盤にしながら、GIAHSの推進を可能にするナラティブ構築についての実践的な経験を得ることができる。そこにGIAHSの推進に関わる若手研究者をメンバーに加えることで、次世代のGIAHS研究者/実務家の養成も狙っている。

世界農業遺産に登録された傾斜地集落の景観(徳島県・つるぎ町)
1970年代の共同労働の様子(徳島県・つるぎ町)