パイロット・スタディ・プログラム

「20世紀後半ジャワの占い本プリンボンから見る知 : 『イルム』に潜在する宗教的複合性」

R5 2-5 (令和5年度 AY2023)

研究代表者前田 彩季  (神戸大学大学院国際文化学研究科 / 博士課程前期課程)
研究課題20世紀後半ジャワの占い本プリンボンから見る知 : 「イルム」に潜在する宗教的複合性
研究対象国インドネシア

研究概要

本研究では、20世紀後半に多く出版されたインドネシア・ジャワの占いの要覧プリンボンに注目し、その内容の変遷を当時の社会状況との関連から明らかにする。プリンボンでは主に暦や計算を用いたジャワ独自の占いが説明されるが、その他にも時代や地域によって異なる様々な事柄が扱われる。これらプリンボンの内容の変遷から、アンダーソン等によって議論されてきたジャワにおける知、現地語の「イルム」のあり方の変容を現代からの視点で再検討する。

研究目的・意義・期待される効果など

本研究の目的は、インドネシア・ジャワにおいて出版されてきた占いの要覧プリンボンに注目し、その内容の変化を当時の社会状況との関連から明らかにすることである。特に、1965年以降華人によるプリンボンの出版が減少したこと、1980年以降ホロスコープと女性を強調するプリンボンが出現したことに注目する。プリンボンの収集・分析に加え、著者・出版社・使用者等のプリンボンに関わる人々へのインタビューを通して、プリンボンがどのような意図で出版され、それがいかに受容されたのか、そしてその変遷を明らかにする。

本研究は、インドネシア・ジャワにおける知のあり方の変遷を具体的に示し、現代からの視点で再検討することに意義がある。知のあり方に関しては、1990年代まで既に多くの研究がなされ、その中で「イルム」と言う言葉が注目されてきた。この言葉はアラビア語起源で知識や科学と訳されるがそれ以上の重層的・流動的な意味を持つ。古典文学的性格と大衆文学的性格の双方を持ちうるプリンボンを対象にすることで、ジャワにおける知「イルム」のあり方に新たな視点を加えることができる他、1990年代以降の社会変化も踏まえた現代的な視点で再考することができる。

また、本研究では小規模な出版社や文学研究の対象ともなりにくい末端の出版物を調査するため、ジャワにおける出版文化の一部を解明・記録することにも繋がる。

ジャワ各地で現在に至るまで出版されてきた様々なプリンボン
様々な方法を知る占い師(ジャカルタ・ファタヒラ広場)