パイロット・スタディ・プログラム
「東南アジアにおけるマダニ媒介性感染症の環境動態調査」
R5 2-1 (令和5年度 AY2023)
研究代表者 | 的場 直輝 (国立循環器病研究センター / 研究補助員) |
研究課題 | 東南アジアにおけるマダニ媒介性感染症の環境動態調査 |
研究対象国 | フィリピン |
研究概要
マダニ媒介性動物感染症はフィリピンの畜産業に甚大な被害を与えており、その流行実態解明は緊急の課題となっている。しかし現状では、現地の検査機器や試薬等の物資不足から、当該疾患の蔓延状況や流行経路は殆ど不明となっている。本研究では、従来の検査法に比べて簡便かつコストの低い新たな検査法を確立し、これを用いて、フィリピンにおけるマダニ媒介性動物感染症の疫学調査実施と流行実態の解明を目的としている。
研究目的・意義・期待される効果など
本研究の目的としては、フィリピンにおけるマダニ媒介性動物感染症に対して、(1)従来の検査法に比べて簡便かつコストの低い新たな検査法を開発すること、(2)開発した検査法を用いて、同感染症の流行実態を明らかにすること、が挙げられる。
方法としては、先ず、現地農場において家畜血液とマダニを含む外部寄生虫のサンプリングを行う。その後、得られたサンプルを用いてLAMP(Loop-mediated isothermal amplification)法を利用した検査法の開発とマダニ媒介性病原体の分子生物学的検出を行い、マダニ媒介性動物感染症の蔓延状況と感染経路を調査する。調査については、フィリピンのヤギの間で流行しているピロプラズマ症を主な対象とした。
本研究の学術的意義としては、フィリピンのマダニ媒介性動物感染症に対して、(1)高感度、低コスト、かつ簡便な独自の診断法を確立すること、(2)これまで殆ど不明であった、同疾患の流行実態を明らかにすること、が挙げられる。また、日本との貿易が盛んなフィリピンにおけるマダニ媒介性動物感染症の流行実態解明は、日本国内に生息するマダニがフィリピンで流行しているマダニ媒介性動物感染症を媒介し得ることからも、輸入検疫上極めて大きな意義を持つと言える。
本研究により期待される効果として、(1)検査機器や試薬等の物資が不足している現地においてもマダニ媒介性動物感染症の継続的な調査が可能となること、(2)同疾患の流行実態解明による、現地の畜産業における感染対策の向上、が挙げられる。