インキュベーション・プログラム

「インドネシア・リアウ州の熱帯泥炭地における氾濫原保護区の設定についての超学際的研究」

R4-5 1-6 (令和5年度 AY2023 継続)

研究代表者大澤 隆将 (金沢大学・国際基幹教育院 / 講師)
共同研究者岡本 正明 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 教授)
加反 真帆 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 / 大学院生)
中川 光 (国立土木研究所自然共生センター / 専門研究員)
長谷川 拓也 (東洋大学アジア文化研究所 / 客員研究員)
福家 悠介 (国立遺伝学研究所 ゲノム・進化研究系 / 日本学術振興会特別研究員PD)
Wahyu Prasetyawan (シャリフ・ヒダヤトゥラー国立イスラム大学 / 准教授)
Kurniawati Hastuti Dewi (インドネシア国家研究革新庁 / 主任研究員)
Nofrizal (リアウ大学水産海洋学部 / 教授)
Akhwan Binawan (ハキキ基金(NGO) / 代表理事)
 
研究課題インドネシア・リアウ州の熱帯泥炭地における氾濫原保護区の設定についての超学際的研究
研究対象国インドネシア

研究概要

この研究は、インドネシアのスマトラ島東部において氾濫原・水没林の保護区域を設置し、その村落周辺の社会と環境の変化を研究しようとするものです。急速なアブラヤシ農園の拡大は、泥炭土壌の劣化をもたらすのみならず、淡水魚類の生育にも悪影響を及ぼすことが指摘されています。NGOや住民、政府関係者と協働しながらカンパール川沿岸に保護区を設置し、住民の環境をめぐる意識と統治の変化と魚類資源の生態システムを明らかにします。

研究目的・意義・期待される効果など

インドネシアでは、環境破壊が進む熱帯泥炭地の保全・修復と持続可能な利用を目標に、さまざまな政策や活動が行われてきました。しかしながら、泥炭地帯網の目のように走る大小河川の生態環境や伝統的にそうした河川の沿岸部に暮らしてきた共同体の社会状況については、ほとんど注意を払われてきませんでした。

こうした背景のもと、本研究の目的は、スマトラ島東部を流れるカンパール川沿岸地域の環境保全をはかりつつ、その社会的・生態的な影響を評価することにあります。その方法は大きく3つ、すなわち、1)住民の協力により、氾濫原・水没林の開発禁止区域を設置すること、2)これに伴う、地域共同体の環境意識や環境ガバナンスの変化を調査すること、そして、3)氾濫原・水没林と魚類資源のあいだの生態系システムを考察することです。

1)を通して、河川に生息する魚類の産卵床と小型魚類の食料源となる熱帯性樹木の落ち葉の供給源を確保します。2)を通して、泥炭地を流れる河川沿岸地域における持続可能な資源利用について、より望ましい方法を模索します。そして3)を通して、泥炭地における水没林・氾濫原を保護する意義に対して、新たな科学的裏付けを与えます。

これらの研究活動を通して、熱帯泥炭地における環境保護政策に新たなパースペクティブがもたらされるとともに、また、自然環境に対する保全と持続可能な利用を試みる活動が住民の主体性のもとでより活性化されていくことが期待されます。

この地域の村落で伝統的に保護されているシアランの木(中央大木)とその周辺の森。こうした保護区画を拡大することが、本研究活動の目標の一つです(Akhwan Binawan 撮影)
屈曲しながら生育したアブラヤシ:泥炭地と洪水で生育環境は良くないものの、アブラヤシ農園は拡大を続けています(大澤隆将撮影)