インキュベーション・プログラム

「ASEANの金融デジタル化と金融包摂」

R4-5 1-1 (令和5年度 AY2023 継続)

研究代表者芦 宛雪 (京都大学経済学研究科・学際融合教育研究推進センター / 特定助教)
共同研究者清水 聡 (株式会社日本総合研究所調査部 / 主任研究員)
濱田 美紀 (アジア経済研究所開発研究センター  / 主任調査研究員)
三重野 文晴 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 教授)
CAO NGUYET THI KHANH (京都先端科学大学経済経営学部 / 准教授)
研究課題ASEANの金融デジタル化と金融包摂
研究対象国タイ, シンガポール, マレーシア, インドネシア, ベトナム, ラオス

研究概要

本研究は、近年東南アジア諸国金融セクターにおけるデジタル金融サービスの急速的な展開による変革をデジタル金融包摂の視点から捉え、デジタル決済とデジタル融資をはじめとするフィンテックイノベーションを考察する。特にデジタル融資の分野に焦点を当てて、ASEAN諸国のケーススタディ・比較研究を通じ、デジタル金融技術の活用が融資効率及びクレジット・スコアリングコストに与える影響を検証し、現段階直面する諸課題を提示しながらデジタル金融包摂政策の見直しを目指す。

研究目的・意義・期待される効果など

近年、デジタル技術が急速進化し、モバイルマネーやオンラインバンキングなどに代表されるデジタル金融サービスが急成長してきた。特にコロナ禍で、ロックダウンやソーシャル・ディスタンスの維持などの措置により、金融サービスのデジタル化の傾向が見られてきた。フィンテックの発展は従来の金融取引よりコストの削減、業務効率化及び金融サービスの品質向上につながり、特に今迄フォーマルな金融サービスにアクセスしにくい低所得世帯の資金需要への対応や零細企業の資金調達や女性達の経済参加に役に立ち、金融包摂の拡大に貢献することが期待されている。本研究は、シンガポール・マレーシア・タイ・インドネシア・ベトナムというASEAN5カ国の比較研究を通じ、デジタル融資やデジタル決済など金融包摂を進めるフィンテックイノベーションを考察し、実務面及び政策面から金融デジタル化の現状を把握する。我々はデジタル融資に重点をおき、オンライン・プラットフォームを介して実施されるP2P融資の活用が零細企業・小規模事業主の中長期資金調達に与えた影響を実証的に解明し、新製品の開発や事業拡大等経営上でもたらされた変化を分析する。その上、地域間のデジタル格差やデジタル技術関連のサイバーリスクや、フィンテック業者の免許制に関する規制の健全化など金融デジタル化による金融包摂の推進において直面している諸課題を取りまとめ、現段階ASEAN諸国のデジタル金融包摂政策の見直しに貢献できる。

2023年3月、ラオス・ヴィエンチャン郊外のマイクロファイナンス機関における財務状況やデジタル融資の現状に関する聞き取り調査
タイ商業銀行市場におけるデジタルバンキングサービスの大手プロバイダーであるカシコン銀行