パイロット・スタディ・プログラム
「インドネシア美術における集団的芸術実践と社会の関係」
R4 2-2 (令和4年度 AY2022)
研究代表者 | ⽻⿃ 悠樹 (九州芸文館 / 学芸員) |
研究課題 | インドネシア美術における集団的芸術実践と社会の関係 |
研究対象国 | インドネシア, ドイツ |
研究概要
本研究は、第二次世界大戦後のインドネシア美術史において散見される集団的な芸術活動に着目し、その歴史的連続性や社会との関係を明らかにしようとするものである。具体的には、コレクティヴの出現に20年余先⾏して1970年代から集団的な芸術の実践に取り組んだインドネシアの新美術運動のメンバーへの聞き取り調査、及びインドネシアのコレクティヴのルアンルパ(ruangrupa)が芸術監督を務める国際芸術祭第15回ドクメンタ(documenta)の現地調査を⾏い、それらの比較を通してその歴史的、社会的意義を考察する。
研究目的・意義・期待される効果など
本研究の⽬的は、インドネシアの美術に見られる集団性というものが、歴史的にインドネシアの美術や⽂化、社会の何を反映し⽴ち現れ、地域社会に何をもたらしているのか、さらに、個の独自性を拠り所としてきた近代的な美術観にどのような変容をもたらすのかということを解明することにある。
本研究は、インドネシアの集団的な芸術活動に対し、美術史研究とインドネシア地域研究の双⽅の視点による学際的なアプローチを試み、インドネシアの美術に⾒られる集団性を社会との関わりのなかで捉え直し、その実践と社会の関係の美術史的意義を探ろうとする点に独⾃性を有する。また、これまで美術はハイカルチャーとして捉えられる傾向があり、インドネシアの地域社会との接点はあまり意識されてこなかった。本研究によって、美術とインドネシア地域社会の密接な関係が明らかになることによって、地域研究にとっても美術が重要な視点となり得ることを⽰すことができるところに意義が認められる。
インドネシアの美術における集団的活動を、歴史的、社会的に検証することによって、グローバルでポストコロニアルな美術史的諸問題を、⾮⻄洋の視点から捉え直す契機となり得る。同時に、インドネシアの地域社会でそれらが果たす役割の⼀端が明らかとなり、インドネシア地域研究における美術という視座の可能性を⽰し、インドネシアの⽂化や社会の新しい側⾯を考察する⼀助となることが期待される。