インキュベーション・プログラム
「東南アジア⼤陸⼭地部における⽣態環境と⽣業に潜在する健康リスクの評価」
R4-5 1-5 (令和4年度 AY2022 新規)
研究代表者 | 富⽥ 晋介 (名古屋大学・アジアサテライトキャンパス学院 / 特任准教授) |
共同研究者 | 坂本 龍太 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 准教授) 梅崎 昌裕 (東京大学大学院医学系研究科 / 教授) 本田 匡人 (金沢大学環日本海域環境研究センター / 助教) 服部 浩之 (名古屋大学大学院生命農学研究科 / 助教) 水野 佑紀 (東京大学大学院医学系研究科 / 助教) 木部 未帆子 (東京大学大学院医学系研究科 / 博士課程) |
研究課題 | 東南アジア⼤陸⼭地部における⽣態環境と⽣業に潜在する健康リスクの評価 |
研究対象国 | ラオス |
研究概要
東南アジア⼤陸⼭地部では、低地⺠が営む⽔稲作が⼭地⺠が⾏う焼畑よりも農業⽣産性が⾼いことを背景として、低地社会が⼭地社会に影響⼒を⾏使してきたとされてきた。実際に、⼭地は飯米が不⾜することが多い。ところが、農業⽣産性の違いだけでは住民の健康を説明できないことがわかってきた。本研究は、⽣態環境と⽣業に関係する化学物質や微量元素と健康との関係を分析し、低地と山地の健康リスクを評価する。
研究目的・意義・期待される効果など
東南アジア大陸山地部の低地では水田稲作、山地では焼畑稲作が営まれている。焼畑は水田に比較して生産性が低いため、山地住民は飯米不足に陥りやすいと言われている。また、山地住民は、火入れによって放出された有害化学物質に暴露しやすい。しかし、これまでの調査から、低地と山地住民間にBMIや身長に顕著な差がみられないこと、山地住民の方が低地住民よりも酸化ストレスが小さいことがわかってきた。
「山地は、低地よりも農業生産性が低く有害な化学物質に暴露しやすい農耕を行っているにもかかわらず、健康リスクが低いのはなぜか」を本研究の問いとし、山地と低地住民の健康に関わるリスク要因を評価することを目的とする。具体的には、近代化の影響に配慮しつつ、1.低地と山地住民の健康状態と社会経済的要因、2.低地と山地の環境中有害化学物質の評価、3.低地の酸化ストレス上昇に関わる要因、4.山地の酸化ストレス低減に関わる要因を検討する。
近年、低地民と山地民間関係は、「支配=従属関係」よりもより多様な関係が成立してきたことを指摘する研究が増えてきた。本研究は、このような多様な関係を明らかにすることに貢献する。また、この地域における地域形成論は、農業生産や交易を重視し、生産や経済的格差を意識したものが多かった。この研究は、農業生産が人々の健康に必ずしも貢献しないことを示すことで、人々の生存や適応から地域を捉え直す。