パイロット・スタディ・プログラム
「“boof ”[ブ](功徳)を積むカトリックたち: 北タイ山地のスゴー・カレン族村における教会政治とコメの寄進に着目して」
R7 2-7 (令和7年度 FY2025)
| 研究代表者 | 木戸 七彩 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 / 大学院生) |
| 研究課題 | “boof ”[ブ](功徳)を積むカトリックたち: 北タイ山地のスゴー・カレン族村における教会政治とコメの寄進に着目して |
| 研究対象国 | タイ |
研究概要
本課題は北部タイ山地社会においてカトリックを信仰するスゴー・カレン族の人々を対象として “boof” [ブ] (功徳)、“Maz boof taj ”[マブタ](功徳を積む)という概念を、宗教者(司祭、助祭)と信徒が運営する村レベルの教会政治において、生産、寄進、分配される“bu” [ブ](コメ)が織りなす社会関係に着目することで理解し、コメを媒介として功徳を積むという行為を通じてカトリック・カレンがいかに神と人の関係を築いているのかを明らかにする。
研究目的・意義・期待される効果など
本課題の目的は“boof” [ブ] (功徳)、“Maz boof taj ”[マブタ](功徳を積む)という概念を、宗教者(司祭、助祭)と信徒で運営される教会政治のなかで、生産、寄進、分配される“bu” [ブ](コメ)をめぐる社会関係に着目することで理解し、コメを利用し功徳を積むという行為が神と人の関係にどのように影響するのか明らかにすることである。
本課題は1)キリスト教を主題とした人類学的研究、2)山地社会において展開されてきた宗教動態に関する先行研究に対し意義あるものである。 これらの先行研究では主に非キリスト教国における改宗前後の民族性の所在や、民族性の動態的側面について議論がなされてきたが、近年では住民の語りからその宗教的な意味世界を人類学的に記述する試みがなされている。しかしながら先行研究では統一的側面が強いカトリック教徒がどのように自らを、あるいは宗教共同体成員を神との関係性において位置付けているのか、明らかにされて来なかった。本課題においても住民の語りから宗教世界を理解しようとする近年の人類学的研究の動向を踏まえつつ、カトリック・カレンのコメを通じた積徳行および神と人の関係性を明らかにすることで、先行研究では看過されてきたカトリック教徒による民族性と宗教共同体成員であるという意識への理解を深めるという意義がある。
期待される主な効果として、上座部仏教国を対象とした功徳、積徳に関する研究テーマをカトリック信徒共同体に対して拡大させ、東南アジアのキリスト教研究におけるカトリック信徒の宗教動態の解明を進めることである。




