パイロット・スタディ・プログラム
「社会ネットワーク分析法を⽤いたタイ国タリボン島におけるジュゴンの個体間関係の可視化」
R7 2-5 (令和7年度 FY2025)
| 研究代表者 | 柴⽥ 万桜⼦ (京都大学農学研究科応用生物科学専攻 / 修士課程) |
| 研究課題 | 社会ネットワーク分析法を⽤いたタイ国タリボン島におけるジュゴンの個体間関係の可視化 |
| 研究対象国 | タイ |
研究概要
本研究は、タイ国タリボン島に生息するジュゴンの個体間関係を可視化・定量化し、空間利用パターンの決定要因を明らかにすることを目的とする。現地の2つの海草藻場でドローンを用いた行動観察を行い、インタラクションの記録・分類および社会ネットワーク分析(SNA法)を実施する。これにより、ジュゴンの空間利用パターンの決定要因を特定し、生息地利用変化の早期特定と管理対応の迅速化を可能にし、保全戦略への貢献を目指す。
研究目的・意義・期待される効果など
【目的】タイ国タリボン島に生息するジュゴンの個体間関係の可視化および定量化を通じて、ジュゴンの空間利用パターンの決定要因の解明を目的とする。
【意義】ジュゴンは海草藻場に依存する海棲哺乳類であり、沿岸開発や撹乱による餌場の変化が個体群の存続に重大な影響を与える。ジュゴンの空間利用パターンは、餌場の海草被度や環境条件だけでなく、個体間の相互作用や社会関係によっても形成される可能性がある。しかし、これまでジュゴンにおける個体間関係という社会構造的要因とそれが空間利用パターンにどのように影響を与えているかは十分に解明されてこなかった。本研究により、個体同士の関係性が餌場の利用に与える影響を科学的に示すことで、沿岸開発の進む東南アジアにおける効果的な保全戦略の設計や管理計画の立案に新たな視点を提供する意義がある。
【期待される成果】本研究により、ジュゴンの空間利用パターンを決定する要因を個体間関係という視点から解明できるとともに、生息地利用の変化を早期に把握し、管理対応の迅速化が可能となる。また、保全戦略の立案においても、従来の物理的な生息地の質に加えて、個体間関係を考慮した空間単位での保全戦略へと転換する契機となる。さらに、海棲哺乳類の行動生態学分野においても、未解明の課題である空間利用パターン決定要因の解明に貢献し、将来的な横断的研究の基盤となると期待される。




