インキュベーション・プログラム

「地球規模で縦断・連携し防災に新たな展望を: 日本、メキシコ、マレーシアのコミュニティエンパワメントの好事例と課題を分かち合う」

R6-7 1-1 (令和7年度 FY2025 継続)

研究代表者中野 元太 (京都大学防災研究所 / 准教授)
共同研究者GARIBAY RUBIO Carlos Rodrigo (京都大学防災研究所 / 大学院生)
DWIYANI Risye (京都大学防災研究所 / 大学院生)
CHONG Khai Lin (マレーシアウタラ大学災害管理研究所 / 上級講師)
ABDUL NIFA Faizatul Akmar (マレーシアウタラ大学災害管理研究所 / 准教授)
NG Zhen Jie (マレーシアウタラ大学技術管理ロジスティック校 / 大学院生)
SETIAWAN Hendy (ガジャマダ大学工学部 / 助教)
PHAM Tien (ベトナム科学技術アカデミー地質学研究所 / 研究員)
吉川 みな子 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 連携教授)
岡本 正明 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 教授)
研究課題地球規模で縦断・連携し防災に新たな展望を: 日本、メキシコ、マレーシアのコミュニティエンパワメントの好事例と課題を分かち合う
研究対象国マレーシア, メキシコ, 日本

研究概要

本研究は、コミュニティでの災害対応や防災対策についての知見・経験が希薄であるマレーシアにおける防災コミュニティエンパワメントを対象とする。昨年度に実施した文献調査およびフィールド調査に加えて、今年度は、日本、中北米、東南アジア諸国に蓄積されているコミュニティエンパワメントの事例交流のための国際シンポジウムをマレーシアで開催し、学術研究者・実務者・政府関係者らが地域間で議論する場の礎を築く。

研究目的・意義・期待される効果など

本研究は、第一に、災害・防災の経験・知見の蓄積が、特にコミュニティレベルにおいて少ないマレーシアを対象地域として、文献・聞き取り・観察調査により地域の特性を明らかにし、日本、中北米(メキシコ)、東南アジア(インドネシアとベトナム)における研究により蓄積された知見・経験と比較し、対象地域におけるコミュニティエンパワメントを強化するために何が必要かという問いの答えを導き出すことを目指す。そして、第二に、視野を地球規模に広げて地域を縦断し相互参照することで、地域間で共有できる好事例および共通課題を明らかにし、新たな展望として継続的に学術研究者・実務者・政府関係者らが地域間で議論する場の礎を築くことである。

防災におけるコミュニティエンパワメントに関して、視野を広げてアジア(日本、東南アジア)と中北米の2大陸を横断し相互参照する研究は、管見の限り本研究が初の試みとなる。こうした地域研究は、1個人あるいは1つの研究室のみで、また2国間の共同研究体制では遂行は難しい。しかし、今回教育社会学、防災工学、マネジメント、政治学、地域研究等の学問分野を専門とする官学民セクター所属あるいは出身の研究者が5か国(日本、メキシコ、マレーシア、インドネシア、ベトナム)から集結し協働することで、実現可能となった。本研究の成果はマレーシアをはじめ、新たに防災が必要となる地域においてコミュニティエンパワメントを実現する際に重要な情報をもたらすと考えられる。これまで限定的となっていた好事例と課題の地域間共有を促進し、学術研究者、実務者、政府関係者らの交流を試みる点も意義深い。本研究は地域や国々で人々がともに学び助けあい、次世代への知見・経験の継承に取り組むことを、防災の新たな展望として示してゆく。

Photo 1: 2004年インド洋大津波の体験についてケダ州の住民から聞く
Photo 2: 2004年インド洋大津波を伝える被害を受けた船のモニュメント(ケダ州)