客員共同研究プログラム

「フィリピン大学と日常の政治―路上、教室と大統領執務室」

R6-7 5-1 (令和6年度 AY2024 新規)

研究代表者高木 佑輔 (政策研究大学院大学 / 准教授)
研究課題フィリピン大学と日常の政治―路上、教室と大統領執務室
研究対象国フィリピン

研究概要

フィリピンの最高学府であるフィリピン大学を一つの制度として捉え、主要学部の教員や卒業生のネットワーク、外交、エネルギー政策やマクロ経済運営の分野で果たしてきた役割を検証する。この計画を実行するため、2025年に半年間、Patricio Abinalesハワイ大学教授を招聘し、共同研究を実施する。

研究目的・意義・期待される効果など

民主化以降の政策立案を担った人々のネットワークの一端を、具体的な政策分野に注目しつつ解明し、フィリピン政治理解に新しい視座を提供することを目的とする。

本研究の第一の意義は、政策過程における人的ネットワークの特徴を明らかにする点にある。従来、政治運動に従事する活動家を分析する際の枠組みとして、民主化がアプリオリに想定され、民主化以降の政策過程論では非制度的アクターの存在は軽視されるか、伝統的政治家一族のネットワークにみられるように、政策の阻害要因として描かれてきた。しかしながら、民主化を目指した活動家の一部は、政治家や政治任命の公職について選挙政治や政権運営にかかわったものも少なくない。本研究では、具体的な政策課題においてどのような人々が、どのような役割を担ったのかを明らかにする。

第二の意義は、大学という制度がフィリピン政治や政権運営の主要アクターを生み出してきたという作業仮説にある。フィリピン大学の主要学部(ロースクール、経済学部や工学部等)は、政治任命職に就く人々を数多く輩出してきたことに加え、特定の案件毎に政府の仕事を引き受ける、あるいは特定の知見を政策提言の形で対外的に公表するなど、積極的に政府の政策立案に関与してきた。本研究は、大学が、専門知と人的ネットワークの提供を通じて、フィリピン政治に一定の役割を果たしてきたことを実証する。

以上の分析を通じて、政治家一族の存在が過度に強調されてきたフィリピン政治理解に新しい視座を提供することが期待される。

フィリピン大学の中庭。左手に中央図書館、正面にはロースクールの建物が見える(西尾善太氏提供)
共同研究者のJojo Abinales先生 (右)と筆者(左)