パイロット・スタディ・プログラム
「スマトラ島におけるマレーバクの個体群保全のためのゲノム、腸内細菌叢、食性解析」
R6 2-5 (令和6年度 AY2024)
研究代表者 | LIM QI LUAN (北海道大学大学院地球環境科学研究院 / 日本学術振興会外国人特別研究員) |
研究課題 | スマトラ島におけるマレーバクの個体群保全のためのゲノム、腸内細菌叢、食性解析 |
研究対象国 | インドネシア |
研究概要
スマトラ島を含む東南アジアに生息している絶滅危惧種のマレーバク(Tapirus indicus)は、同地域で進行中の大規模開発により生存の危機に瀕している。この研究は、スマトラ島のバクの個体群をより深く理解し、保護することを目指して、バクのゲノム、腸内細菌叢、および食性を分析する。研究実験を開始するにあたり、現地の野生生物局および保護管理者と話し合い、プロジェクトの実現可能性を評価する。
研究目的・意義・期待される効果など
生息域内と域外におけるより良い保全には、マレーバクの遺伝子多様性や腸内微生物叢の情報など、生態をより深く理解することが不可欠である。ゲノム遺伝的多様性解析および糞便DNAの解析によって、特に亜種である可能性のあるスマトラ島の個体群を異なる地域の野生個体および飼育個体と比較し、島嶼マレーバク個体群のゲノムおよび腸内細菌叢の特徴を明らかにすることを目指す。さらに、糞便DNAから植物種を同定することで、スマトラ島と大陸の個体群の食性の違いを比較できるかもしれない。これらの要素(遺伝的多様性、腸内微生物叢、食物選択)は、マレーバクの地域適応と進化に関する洞察を提供し、東南アジア諸国と日本との間の国際的な保全計画に貢献する可能性がある。例えば、飼育下繁殖プログラムにおけるハイブリッド個体の適合性や、将来的に隔離された個体群の遺伝的救済の実現可能性を評価する手段を提供することを期待できる。このパイロット・スタディでは、政府や大学の研究施設を訪れ、スマトラ島の政府省庁、国立公園、動物園との繋がりを築くことを目指している。訪問中にスマトラ島由来のサンプルが採取できれば、ゲノムシークエンシング試験を行い、異なる生息地のバク間のゲノム比較に組み込む予定である。訪問後は、既存の助成金に加え、スマトラ島での共同研究を本格化開始するため、さらなる助成金の獲得に取り組む。得られた成果は科学雑誌に掲載され、国際会議で発表される。