インキュベーション・プログラム
「⼈権の時代の東南アジア」
R6-7 1-6 (令和6年度 AY2024 新規)
研究代表者 | 今村 真央 (山形大学人文社会科学部 / 教授) |
共同研究者 | 石井 正子 (立教大学異文化コミュニケーション学部 / 教授) 中西 嘉宏 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 准教授) 長田 紀之 (アジア経済研究所 / 研究員) 五十嵐 元道 (関西大学政策創造学部国際アジア学科 / 教授) 土屋 喜生 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 助教) |
研究課題 | ⼈権の時代の東南アジア |
研究対象国 | ミャンマー, フィリピン, インドネシア, 東ティモール |
研究概要
本研究は、1970年代から今日を「人権の時代」をみなし、東南アジア現代史を国際人権運動という視点から再考する試みである。冷戦期に起きた東南アジアでの戦争や虐殺は、国際人権運動運動の形成を突き動かす要因であった。そして、この運動は過去半世紀のあいだ世界的な影響力を持つに至った。本プロジェクトは、人権運動史と東南アジア研究を架橋する共同研究企画である。
研究目的・意義・期待される効果など
国際人権運動は1970年代から飛躍的に発展し、今日では多大な国際的影響力を有するようになった。1990年代には「刑事司法への転回(criminal turn)」が起こり、処罰が人権運動の中心的な関心事になるとともに、国際刑事司法の役割に期待が高まった。この半世紀のあいだ東南アジアは、国際人権をめぐる議論に重要な事例を提供し続けてきた。しかし、東南アジアでの人権調査、ジェノサイド認定、制裁の効果・影響に関する学術研究はいまだに乏しい。人権の規範や制度を国際的に展開する運動は、紛争現場での平和構築や人道活動にどのような影響をもたらしてきたのだろうか。国際人権運動――とくに国際刑事司法機関――は、この地域での問題解決にどこまで寄与できるのか。これらが本共同研究の中核となる問いである。
人権研究とアジア研究を接続するプロジェクトを今日、日本で進める意義は大きい。現在、日本政府は「法の支配」を外交指針としても強調しており、国際刑事裁判所への最大の分担金拠出国でもある。しかしこの分野での日本の調査能力や政策提言力は低いと言わざるを得ない。「人権力」の強化が求められているいま、人権と地域研究を結びつける分野横断的な学術研究を始動する意義は大きい。本プロジェクトは、関連する諸分野間に新たな対話の回路を開き、「人権と東南アジア」という新たな学術領域をデザインしていく。