フィールド滞在型プログラム

「東南アジアの脱農化パラドクスの解明に向けた道具立て: 包括的枠組みの構築へ」

R4-5 4-1 (令和5年度 AY2023 継続)

研究代表者松田 正彦 (立命館大学国際関係学部 / 教授)
共同研究者富田 晋介 (名古屋大学アジアサテライトキャンパス学院 / 特任准教授)
広田 勲 (岐阜大学応用生物科学部 / 准教授)
山本 宗立 (鹿児島大学国際島嶼教育研究センター / 准教授)
田中 耕司 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 名誉教授)
小林 知 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 教授)
研究課題東南アジアの脱農化パラドクスの解明に向けた道具立て: 包括的枠組みの構築へ
研究対象国タイ, インドネシア, ミャンマー, ラオス, カンボジア 

研究概要

東南アジアでは、数十年間にわたり様々な局面において農業・農村の重要度が低下する脱農化が進行してきた。一方、農地面積の拡大や農業生産の増加といった農業化の傾向も同時期にみてとれる。本研究の目的は、この逆説的状況(脱農化パラドクス)の解明である。本共同研究プロジェクトでは、人びとのリスク観に着目した分析枠組み案の再検討と拡張、仮説演繹による実証研究計画の立案、実証研究で使う指標の開発に取り組む。

研究目的・意義・期待される効果など

本研究の目的は、現代東南アジアで脱農化と農業化という相反する変化が同時に起こっている状況(脱農化パラドクス)を説明しうる理論枠組みを構築することである。その上で、脱農化と農業化を含む、現代東南アジア農業・農村の様々な変化を体系的に理解できる枠組みの構築を目指す。

本研究と問題意識の重なる先行研究では、東南アジアの脱農化が唱えられて十年以上を経ても東・東南アジアを中心に小規模農民が存続し続けていること、いわば脱農化現象の停滞にフォーカスをあて、包括的な論点整理や事例分析を試みている。これらに対する本研究の独自性は、東南アジアの農業化に着眼し、対照的な方向性を持って同時進行している2つの変化―脱農化と農業化―の関係性を論じるところにある。 東南アジアにみられる脱農化現象は、少なくとも今のところは日本を含む先進諸国が経験してきたような農業・農村の停滞や衰退―たとえば都市部への人口流出による農村社会の弱体化や条件不利地での農業衰退―とは異なる様相をみせている。本研究は現代の東南アジア地域(あるいは熱帯地域)に特徴的な社会変化や経済発展の固有の様態を明らかにしようとするものである。また、これまでに多くの地域研究者らが生態的特徴を基に描いてきた東南アジア地域像を、社会と自然との距離が広がりつつある21世紀の状況に適合したものにバージョンアップする試みでもある。

ラッカセイ畑で除草作業に勤しむ若者。ミャンマー・マグウェ管区域。2017年8月撮影
村住みの左官職人たちが仏像をつくる。ミャンマー・ザガイン管区。2018年8月撮影