インキュベーション・プログラム
「マダニ媒介性動物感染症の簡易迅速的な診断法の構築」
R4-5 1-4 (令和5年度 AY2023 継続)
研究代表者 | 田仲 哲也 (鹿児島大学共同獣医学部 / 教授) |
共同研究者 | 山崎 渉 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 教授) Galay Remil Linggatong (フィリピン大学獣医学部 / 准教授) Talactac Melborune Rio ( カヴィテ州立大学獣医生命科学部 / 准教授) |
研究課題 | マダニ媒介性動物感染症の簡易迅速的な診断法の構築 |
研究対象国 | フィリピン |
研究概要
フィリピンを中心に東南アジアは近年著しい経済成長を遂げ、日本への農畜産品の輸出も急増している。しかし、この地域における種々の感染症は、家畜の生産性向上を妨げる最も重要な位置を占める。とりわけ、マダニ媒介性感染症による被害は深刻とされ、その実態解明が喫緊の急務となっている。本研究は日本と貿易が盛んなフィリピンにおけるマダニとマダニ媒介性動物感染症の流行の実態を明らかにし、日本の輸入検疫体制強化とフィリピンの診断技術の向上と普及に資することを目的として実施する。
研究目的・意義・期待される効果など
本研究は、日本と地理的に近いフィリピンにおけるマダニ媒介性動物感染症の流行の実態を明らかにすることに着目した。すなわち、フィリピンにおけるマダニと牛のバベシア原虫やタイレリア原虫、アナプラズマ、豚のアフリカ豚熱ウイルスなどマダニ媒介性病原体の流行実態を分子疫学的手法により調査することを企画した。とくに、バベシア原虫などのマダニ媒介性原虫は牛に重度の貧血・黄疸を主微とする致死的感染症を引き起こし、その多くは家畜(法定)伝染病として指定され、日本国内には存在しない。しかし、日本にはこれらの原虫を媒介しうるマダニの存在が確認されているために、一度国内に侵入すれば広く蔓延・浸潤する可能性が大きく、その清浄化は非常に困難と想定される。このようにフィリピンにおけるマダニ媒介性動物感染症に焦点をあて、その流行実態を解明することにより、日本の輸入検疫体制強化とフィリピンの診断・予防対策の向上に資することを目的とした。
研究代表者らはマダニやマダニ媒介性動物感染症の診断・予防・治療に関する研究において数多くの実績をあげてきた。今回企画した研究の独創的な点として、(1) 研究代表者らがこれまでに確立してきたマダニやマダニ媒介性動物感染症に関する実験技術と独自の診断方法を駆使して疫学調査を実施すること、(2) 当分野の博士課程修了者を中心に研究協力者を現地パートナーとする強力なネットワークを駆使できることが挙げられる。