インキュベーション・プログラム

「ASEANの金融デジタル化と金融包摂」

R4-5 1-1 (令和4年度 AY2022 新規)

研究代表者芦 宛雪 (京都大学経済学研究科・学際融合教育研究推進センター / 特定助教)
共同研究者三重野 文晴 (京都大学東南アジア地域研究研究所 / 教授)
濱田 美紀 (アジア経済研究所開発研究センター / 主任調査研究員)
CAO NGUYET THI KHANH (京都先端科学大学経済経営学部 / 准教授)
清水 聡 (株式会社日本総合研究所調査部 / 主任研究員)
研究課題ASEANの金融デジタル化と金融包摂
研究対象国インドネシア, シンガポール, タイ, ベトナム, マレーシア

研究概要

本研究は、近年ASEANの金融部門におけるデジタルトランスフォーメーションに焦点を当てて、実務面及び政策面から金融サービスのデジタル化の進展状況を把握し、特にデジタル融資が低所得者及び零細・小規模事業主に与える影響を金融包摂の視点から検証する。デジタル金融サービスの高い潜在力を持続的にかつ包摂的に活かすため、ASEAN諸国のケーススタディ・比較研究を通じ、現段階で直面する諸課題を検討しながらデジタル金融包摂政策への貢献を目指す。

研究目的・意義・期待される効果など

近年、フィンテックのイノベーションにより、デジタル金融サービスの利用が加速され、金融システムにおける効率性の改善やコストの低下につながり、遠隔地や農村など金融インフラの整備が遅れている地域の金融包摂が進んできた。本研究は、ASEAN5か国(シンガポール・マレーシア・タイ・インドネシア・ベトナム)の金融デジタル化の現状をデジタル融資・デジタル決済・オンライントレーディングという金融包摂を進める三つのフィンテックイノベーションから全般的に考察する。特に、デジタル融資に重点をおき、オンライン・プラットフォームを介して実施されるP2P融資の活用が零細企業・小規模事業主の中長期資金調達に与えた影響を実証的に解明し、新製品の開発や事業拡大等経営上でもたらされた変化を分析する。その上、デジタルインフラの利用平等性・デジタル格差、金融リテラシー・デジタルリテラシー向上及びデジタル技術関連のリスクなど、金融デジタル化による金融包摂の推進において直面している諸課題を考察して提示する。 本研究では、ASEANの金融デジタル化及び金融包摂に焦点を当てて、フィンテックの進展状況を把握した上、実務面及び政策面において直面する諸課題を取りまとめ、こうした社会変化が東南アジア地域の貧困削減及び経済成長にとってどのような影響を与えているのか、何を意味しているのかを解明する。デジタル金融サービスの高い潜在力を持続的にかつ平等に活かすため、現段階ASEAN諸国のデジタル金融包摂政策の見直しに貢献できる。

Photo 1: 2022年8月、タイ東北部コンケン府農村部におけるデジタル金融サービス使用状況に関する現地調査。
2022年8月、タイ東北部コンケン府農村部におけるデジタル金融サービス使用状況に関する現地調査。
Photo 2: デジタルバンキング業務が急成長してきた、タイ最大手商業銀行バンコク銀行。
デジタルバンキング業務が急成長してきた、タイ最大手商業銀行バンコク銀行。